「女性活躍・働き方応援シンポジウム」を開催しました!
茨城県といばらき女性活躍・働き方応援協議会は、
2024年2月15日(木)に
「女性活躍・働き方応援シンポジウム」
を開催しました。
本シンポジウムは、女性活躍や働き方に関する現状と課題、そしてこれから進むべき方向性について考え、
企業における女性管理職の登用や、女性自身もやりがいを実感し働くことができる社会につながることを目的に
開催したものです。
昨年に引き続き、会場の水戸市民会館とオンラインのハイブリット形式で開催しました。
チラシデータ
リーフレットデータ
第1部 女性リーダー登用先進企業表彰
茨城県では、職場においてリーダーとなる女性人材の育成や管理職・役員への登用促進に積極的に取り
組み登用実績が優れている企業を表彰しています。
令和5年度は4社が受賞され、知事から直接表彰状を授与されました。
また、受賞企業の取組を優良事例として代表者からのメッセージとともにご紹介しました。
【特別優良賞】
海老根建設株式会社
(建設業、大子町)
株式会社さわやか交通
(運輸業、水戸市)
【優良賞】
株式会社三富子ケース
(製造業、ひたちなか市)
株式会社フジヨシ
(サービス業、筑西市)
第2部 基調講演
「なぜ企業の意思決定層に女性が必要なのか」【講師】
浜田
(
敬子
(
)
氏 ジャーナリスト
・私の新卒で入社した新聞社では、日中は取材先を回り、夜は夜回りや原稿の執筆をするなど、
残業が常態化していていました。しかし1年経つうちに最初はおかしいと思っていた労働環境にも
慣れてしまうんです。後輩がおかしいと声を上げても、「このぐらいの環境に耐えられなければ
この仕事続けられないよ」と思ってしまったんですね。人はおかしいと思ったことでも、その環境
に慣れてしまうと、声を上げなくなってしまう。多くの日本企業で起きていることで、
それが日本が30年間変われなかった要因だと思います。
・今男女の間にこれだけの格差が現実としてあります。日本は国別のジェンダーギャップランキングで
世界146カ国125位です。特に経済分野と政治分野の男女の不平等が顕著です。経済分野で順位が低迷
しているのは、女性管理職の少なさや男女の賃金格差が要因です。
今はこの格差、不平等の状態の是正をすべき時期で、平等な状態になるまでは、女性たちに積極的
にチャンスを与える必要があると思っています。そういう話をすると、必ず逆差別じゃないか、
女性優遇じゃないかという声が必ず起きます。しかし、何度も強調しているように、今が不平等を
放置している状態なのです。平等になるまでは女性たちの背中を押すべきだと思います。
・女性に管理職を打診すると、「私には無理です」と断られるケースも多いと思います。
それを持って「女性は意欲がない」ととらえる経営者や上司世代は多いですが、若いうちから
機会を与えられてこなかった女性たちが自信がないのは当然です。きちんと若いうちから
期待して育成していってなければ、突然管理職を打診しても躊躇するのは当たり前だと思います。
もう一点、日本ではまだ圧倒的に家事育児を女性が担っています。仕事もしながら家事も育児も
担っている状況で、これ以上負担が増えるのは無理だと考えるのも当然です。女性の管理職を
増やそうと思ったら、若いうちから期待して育てること、そして家庭では男性が応分に家事育児
を負担することが重要です。
・若い女性たちの東京圏への流出は、様々な地域で問題となっていますが、なぜ流出するかというと、
地元に働きたい企業がないからです。若い女性が流出すれば少子化も加速します。少子化と企業の
働き方は大きな相関性があると言えます。
・必要なことは、男性には両立支援制度を積極的に利用して子育てや家事を担ってもらうことです。
日本では育児のための短時間勤務制度を利用しているのは99%が女性です。5、6年短時間勤務
を利用すると、昇給や昇進が遅れ、マミートラックと言われる状態になってしまう。本人も
キャリアを諦め自己肯定感が下がってしまうので、極力マミートラックの状況に陥らないように
することが必要です。そのために家庭での夫の役割も重要ですが、女性たちがマミートラックを
抜け出すためには、上司の役割も大切です。短時間勤務の女性でも、どんな仕事がどこまで
できるのか、やりたいのか、今後どんなキャリアを想定しているのか、きちんと向き合って
本人の希望を聞いてもらえると、女性たちは前向きに仕事に取り組めると思います。
第3部 トークセッション
基調講演のテーマをもとに、女性の登用が進まない理由について、データを用いながら、パネリストそれ
ぞれの立場からディスカッションしました。
【ファシリテーター】
遠藤
(
えんどう
)
(
)
和
(
かず
)
氏 株式会社キャリアアンドブリッジ 取締役
【パネリスト】
浜田
(
はまだ
)
敬子
(
けいこ
)
氏 ジャーナリスト(基調講演講師)
鍋嶋
(
なべしま
)
(
)
洋行
(
ひろゆき
)
氏 大橋運輸株式会社 代表取締役社長
小口
(
こぐち
)
いづみ 氏 株式会社ヴィオーラ 営業部長
柳瀬
(
やなせ
)
香織
(
かおり
)
氏 海老根建設株式会社 代表取締役(受賞企業)
鍋嶋
(
なべしま
)
(
)
洋行
(
ひろゆき
)
氏 大橋運輸株式会社 代表取締役社長
・採用力の強化に向けた取組の一つとして、多様性を受け入れるダイバーシティに取り組み始めました。
ダイバーシティ経営と言うと大手企業が取り組んでるイメージですが、中小企業こそダイバーシティー経営が
必要だと思います。
・弊社のダイバーシティー経営は女性活躍からスタートしました。子育て期の女性も働きやすいように、
勤務は週3勤務から、時間は1日4時間から、出社は午前・午後と自由になっています。(仕事内容も以前は
女性は事務職が中心でしたが、現在では幅広い分野に女性が配置されています。)管理職についても、
以前は管理職は長く働くイメージでしたが、管理職は長く働くことではなく、職場環境や事業の付加価値を
高める人として、短時間勤務の管理職も誕生しています。
・弊社も10年前は8割以上が大手運輸会社からの下請け業務でしたが、女性の働きやすい職場環境とか
ダイバーシティ人材の受け入れなどの採用力強化の成果で、少しずつビジネスモデルも変化し、
現在、法人部門は、下請け比率が3%以下、個人部門に関しても、生前整理・遺品整理など、
仕事の幅を広げています。求人応募数も年々求人票が増え、現在では、地域からだけではなく、
他府県などを超えた求人になっております。
・中小企業では社長が言っても社内に浸透しないし、管理職にも浸透しないと思うんですけど、
継続的に言い続ける本気度が社内を変えると思う。
・弊社の最初の女性管理職から、「もし私が残業するようになったら、次の世代が管理職は、
やはり残業しないといけないっていうことを見せつけてしまうので、今まで通りやるけどいいですか。」
と残業せずに今まで通り勤務時間を週4でやったことは良かったです。
・ダイバーシティ経営は、短期ではなく長期で、担当者だけが頑張るんじゃなくて全体で取り組み、
失敗を恐れずに、失敗して、社内でまた話し合うトライアンドエラーを繰り返すことによって
社内の文化が広がると思います。
柳瀬
(
やなせ
)
香織
(
かおり
)
氏 海老根建設株式会社 代表取締役
・時間外の上限規制への対応として、昨年から取り組んでいますが、なかなか施工管理士という
技術者の残業を減らすことが、システム上難しく、どうやって解決するのかって考えたときに、
タスクシフティングで、資
格が無いとできないことは、専門の技術者の方にやってもらい、
それ以外のことを、他の人にやっていただこうということで、建設ディレクターを導入しました。
・最初の導入のときには非常に反対があり、抵抗があったが、何度も説明をして、なぜ必要なのか
理解していただいて、共感をいただきまして、建設ディレクターとして入社していただいてから、
施工管理技士に合格する方も出てきていて
、人材確保としても有効な取組となっています。
・女性の技術者や技能者が集まってできている「建女ひばり会」というものがありまして、
女性の横のつながりを作り相談をしやすくしているほか、女性の労働環境の改善のために
更衣室の状況などのパトロールを行っています。
・知らない方も多いと思いますが、建設業は資格の業種で、自分のキ
ャリア形成を非常に描きやすい業界なので、
それをどのように伝えていき、どのように地域の守り手を守っていくかに重点を置いて取り組んでいきたいと思います。
小口
(
こぐち
)
いづみ 氏 株式会社ヴィオーラ 営業部長
・営業に異動して初めて契約できた大口のお客様から紙おしぼりに切り替えたいと連絡があり、
ショックを受けたのですが、当時の女性の総務部長が、これをきっかけに他社にはない女性に
喜んでもらえるような、最高のおしぼりを作ろうよと、言葉をかけてくれたことで、
女性のプロジェクトチームを立ち上げ、マーケティングを開始しました。
・女性が喜ぶような本当に最高級のおしぼりを作ろうと決まり、品質が良い今治タオルと交渉を重ねたり、
おしぼりのデザインを考えハートにするなど、女性の視点を活かして何とか商品化にたどり着きました。
今では当社で一番の売り上げの商品になっています。
・管理職への打診があった際には、自信や経験がなく1度お断りをしました。
その後、2度目の打診をいただいた際に、社長から女性の感性を生かしていきいきと仕事してほしい
とのお言葉をいただいたことや、普段から家事育児に協力してくれている主人から今がチャンスかもしれない、
声をかけてもらっているときにやってみたらと背中を押してもらえたことでお受けすることにしました。
・管理職になってから、数値など担うものは大きいのですが、スケジュール管理調整もできますし、
立場が変わってから新しい視点や価値観が生まれてくることもあり、とても良い経験をさせていただいています。
浜田
(
はまだ
)
敬子
(
けいこ
)
氏 ジャーナリスト
・大橋運輸では、短時間勤務の女性も管理職になっていますが、当初は社内でも男性からの反発の声があったそうです。
しかし鍋嶋さんが話をすると、、反対する側には合理的な理由はないとわかったそうです。
感情的に反対しているケースもあるので、経営者が 、短時間の女性でも不都合はないことを丁寧に説明することで、
みんな納得したということをおっしゃっていました。
・今の若い世代は、ダイバーシティの進んでいる企業で働きたいという人が多いです。
例えば、大橋運輸のダイバーシティ担当者は愛知県瀬戸市出身でもない人なのですが、わざわざダイバーシティの
進んでいる企業で働きたいと就職しているんですね。大橋運輸には女性だけでなく男性も含めて全国から
卒論で研究したいという大学生が視察に来るそうです。ダイバーシティを進めることは採用力にも直結すると感じています。
・ダイバーシティは1 年や2年で結果が出るものではありません。すぐに成果が出ないから止めるのではなく、
10年ぐらい本気で取り組む覚悟が必要です。目の前の業績がすぐ上がるわけではないが、中長期的には
採用力に繋がったり、労働環境の改善に繋がり社員の定着率が上がったりします。さらにこれまで会社になかった
新しいアイデアや価値が生まれることにも繋がり、中長期的に会社の成長を後押ししてくれます。
・本日登壇された3人の方たちはそれぞれ制約があったのです。例えば、人が採用しにくい物流、建設という業種
であったり、ご自身が子育てとの両立を抱えていらっしゃったり。しかし、制約は逆にチャンスにもなると思います。
柳瀬さんの会社では、現場で働けない人がいたから建設ディレクターのような新しい職種を考えられ、
建設業界全体にイノベーティブな働き方を生み出されました。
大橋運輸では、女性のアイデアを生かした新しいサービスも生まれています。
最後に
ファシリテーターの遠藤氏から「今日のお話から何か1つでも、ご自身や自社で取り入れていただいたり、
周りにご発信いただくことで、茨城県の女性活躍や働き方改革、もっと言えばダイバーシティが進んでいくことを
ともに目指して、進んでいけたらと思っています。」とメッセージを伝えられました。