働き方改革・女性活躍優良企業詳細

桂建設株式会社

代表取締役社長  石井 髙子さん

代表者
職名
代表取締役社長  石井 髙子 事業内容 土木・舗装工事業
所在地 牛久市さくら台1-18-4
業種 建設業 従業員数 29名
URL https://katsura-k.com/

若手社員の退職をきっかけに人材育成チームを発足

人材育成チーム打合せの様子

 当社が働き方改革に取り組み始めたのは、4年前に20代、30代の現場の若手スタッフ4名が一気に退職したことがきっかけです。当時はわからなかったのですが、退職した社員の1名が新たな資格を取得したかったことを知り、スキルアップしたいという社員の意向を把握できなかったことを反省しました。そこで、事務、営業、現場の各部門で若手社員を育成しているメンバーによる「人材育成チーム」を社内に立ち上げました。人材育成チームでは、社員の意向(意見)を吸い上げるために、定期的に社員面談を行っています。社員がどのような資格を取りたいと思っているのかがわかり、会社としても、試験やテキストの費用、難関資格の受験講座受講料などを負担することで、社員のスキルアップを積極的に後押しできるようになりました。そうした取組もあってか、10年前には5名だった1級土木施行管理技士が、現在は11名になるなど国家資格取得者が増加しました。
 また、毎月開催する人材育成チームの定例会でメンバーが意見交換することで、各部門が何をやっているのかがお互いにわかるようになりました。社員の採用面接についても、以前は専務など人事担当だけで行っていましたが、現在は人材育成チームが担当しています。それにより、現場のスタッフにも人を採用することの大変さを肌で感じてもらえるようになり、新入社員を大切に育ててくれるようになったと思います。

 働き方改革を進めるうえで苦労したのは、社員の意識改革です。人材育成チームを立ち上げると同時に、デスクのフリーアドレス化に取り組みましたが、なかなか社員の理解を得られず導入するときにはかなり苦労しました。でも、実際に導入してみたら、職場がきれいになっただけでなく、工事現場ごとに編成されるチームの打合せもやりやすくなりました。
 最初は抵抗があったフリーアドレス化ですが、やってみたら居心地がよいとわかり、これをきっかけに、新しいことに取り組むことへの抵抗感がなくなりました。それ以来、当社では、何か新しい取組を始めようとする時には、トップダウンではなく、まず人材育成チームで検討するようにしています。いろいろな部門のメンバーで議論するので、提案しても現場の意見などで却下されることもありますが、新しい取組が社内に浸透しやすくなったと思います。

フリーアドレス化されたデスク

県内建設業界初の「くるみん認定」取得

 2022年に子育て認定企業として厚生労働省のくるみん認定を、県内の建設業界で初めて取得しました。私は、女性でも男性でも若い人材に入社してもらうためには、仕事と育児を両立しながら働き続けられる職場環境は必須だと認識しています。このような取組は、特に建設業界では遅れていますので、チャレンジしてみたいと思いました。取得にあたっては、茨城県建設業協会の女性部会「建女ひばり会」における交流や先進企業からの情報収集などにより勉強しました。具体的な取組としては、子の看護休暇・介護休暇・妊活休暇いずれも5日間(有給)を1時間単位で取ることができます。また、未就学の子どもを育てる社員には、保育所等からの急な呼び出しがあったときに休みやすいように、年次有給休暇や子の看護休暇の休暇取得申請書をチケット形式(1枚で1時間)で配布し、手続きを簡素化するなどの工夫をしています。
 こうした取組やくるみん認定について、自社のホームページや就職説明会等でアピールしています。それを見て応募してくれた女性や子育て中の方もいて、実際に当社で働いている社員もいます。独身の方にとっても、出産や子育てをするときに、会社がバックアップしてくれるという安心材料になっているのではないでしょうか。将来的には「プラチナくるみん」の取得を目指しています。
 また、昨年、全社員を対象にした介護についてのアンケートを初めて行いました。当社には40代の社員が多いのですが、将来の介護について不安に思っている社員が多いことがわかりました。このアンケートは単発ではなく定期的にやらなくてはいけないと考えています。

建設ディレクターとして採用した女性社員を育成中

現場事務所で工事書類を作成する建設ディレクター

 今年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されることから、現場監督の負担を軽減するため、書類作成等の業務をバックオフィスから支援する建設ディレクター制度を導入しました。この建設ディレクターという新たな職種は、若い人、特に女性に対して、建設業のイメージを良くしているように感じています。入社時には事務職を希望していた社員も、現在は建設ディレクターとして、現場の支援に喜びを感じながら働いています。机の上だけでは現場でどのような仕事をしているのか想像がつかないのではないかと思いますので、最初は実際に現場に入って勉強してもらっています。現場でも、彼女たちが将来自分たちの力になってくれることに期待しながら教育してくれています。
 また、建設ディレクターを導入したことで、施工計画書など従来は現場を担当した技術者がそれぞれ異なるレベルで作成していた書類のレベルを均一にすることができました。

教育システムを明確化

 今後、キャリアパスがより明確になるような社員教育システムをつくっていきたいと考えています。これも、社員との面談がきっかけなのですが、入社何年目にどのようなスキルを身につければいいか明確なものがないと不安だという声がありましたので、制度の導入に向けて準備しています。建設業は、道路工事だったり河川工事だったりと従事する現場により工事内容が異なるため、社員によって得意な分野とそうでない分野が出てきてしまいますが、教育システムを整備することにより、スキルの平準化も図れるのではないかと考えています。
 当社は、働き方改革に向けて今も様々な取組を模索中ですが、とりあえずチャレンジしてみようというスタンスでいます。仮に失敗に終わったとしても、それはそれで次へのステップの足掛かりになると思います。大企業のような取組は無理でも、地方の中小企業でも取り組める、アットホームな社員一人一人が安心して働ける働き方改革を進めていきたいです。
 私は会社経営の舵取りはトップダウンの時代でないと考えております。会社の様々な課題に対処する時には社員がそれぞれの経験や考えを出し合い相談し、結論を出していって欲しい。私が人材育成チームを立ち上げた背景にはそのような思いがあります。
 もちろん、人材育成自体とても大事なことですが、人材育成チームはそれだけでなく会社全体を変えていくためのツールだと思っています。社員には、経営者の言うことをやっていればいいということではなく、自分たちも会社の運営に関わっていこうという意識を持って欲しいと思っています。
 そして、経営者層が積極的に若手の意見を聞いたり、自社でできそうな取組について情報収集したりすることも大切です。
 働き方改革にすこしずつ取り組み始めてから、「雇用されている」という意識から「会社の取組に参加しよう」というように、社員の意識が変化してきているのを感じます。

現場で活躍する女性技術者

一歩ふみだすことが次の展開へ

 働き方改革は、はじめの1歩を踏み出すことで、そこからいろいろな展開が見えてきます。当社も、社員が辞めたことをきっかけに、人材育成チームを立ち上げたことから、様々な取組へと波及していきました。会社で何か困りごとが起きた時、何かを始めると、そこからまた何か次の展開につながりますので、例えば、有給休暇を半日とか時間単位で取れるようにするなど、まず取り組みやすいことから始めてみてください。
(2024年1月取材)